まるで明治時代の洋館のようなアーチ状のステンドグラスに重厚な家具、店先に配されたガス灯……。ゆったり流れる時間の中、ケーキや香り高いオリジナルブレンドのコーヒーを楽しもう。
ステンドグラスの光が彩る喫茶室
幕末に開港し、新しい文化の発生地として栄えた横浜。日本で初めてガス灯が灯ったこの場所には、今もどこかハイカラな雰囲気が残る。関内駅から6分ほど歩くと、かつては積み荷を運ぶ馬車が行き交っていた馬車道エリアに、どっしりとしたれんが造りの洋館「馬車道十番館」が現れる。この1階が喫茶室だ。
店内に一歩足を踏み入れると、吹き抜けの圧倒的な開放感が広がり、磨かれた床にはステンドグラスの光が艶やかに反射する。装飾が施された木製家具から照明、間仕切りなどの細かな調度までが、この店のためにつくられたオリジナルだ。大量生産品にはない温かみと佇まいに、補修をしながら大切に扱ってきた店の歴史を感じる。
建物内は、廊下や階段にも古い写真や絵画、創設者が集めたガラスコレクションなどが飾られているほか、喫茶室以外のフロアにもバーや本格的なフレンチレストラン、結婚式や披露宴に利用できる大小の宴会場もあるので、ぜひ見て回りたい。喫茶室以外のフロアを見に行く場合はスタッフへ確認を。
丸型ショートケーキやクリームソーダに心ときめく
メニューに並ぶのは、オリジナルブレンドのコーヒーや喫茶店の定番クリームソーダ、ケーキやプリンなどのスイーツの他、カレーやサンドイッチといった軽食もあり、目移りしてしまう。
1番人気は、「ひとり用のホールケーキ」というイメージから生まれた丸型ショートケーキ。ふわふわのスポンジ生地と軽い口当たりのホイップクリームがたっぷり。少し大きめサイズで、ホールケーキを独り占めするぜいたくを満喫できる。
常連さんの人気が高いのは、創業当時からのメニューでシンプルなケーキのサバラン。シロップがしたたるほど染み込んだ生地は、一口ごとに洋酒の風味がじゅわっとあふれ、しっとりとしたクリームと口の中で溶け合う。ピスタチオやレーズンがいいアクセントで、これぞ大人の味。この空間で味わうのにぴったりの一品だ。
コーヒーは、厳選されたブルーマウンテンをベースに上質なコーヒー豆をバランス良くブレンドしたオリジナル。コーヒークリームとコーヒークリームを半立てしたホイップクリームの2種類が付く。クリームをたっぷり入れて、ミルクコーヒーにして飲むのが十番館流。まろやかで優しい味わいが楽しめるので、「コーヒーはいつもブラック」という人にもぜひ試してみてほしい。
お土産には、ガス灯の模様が型押しされた「ビスカウト」を
1550(天文19)年ごろ、カステラなどの西洋菓子とともに伝来したといわれるビスカウトは、厚みのあるさくさくした食感のビスケット。中にクリームを挟み、優しい味わいだ。文明開化の象徴で、店のマークにもなっているガス灯の模様が横浜らしいとお土産に人気。かわいい缶に入った詰め合わせもあり、プレゼントにも最適だ。異国情緒を感じる伝統の味を、ぜひ持ち帰ろう。
- 文/ミヤウチマサコ(アド・グリーン)
- 写真/岩堀和彦
- ※情報は2025年11月時点のものです。
- ※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
- ※表記されている料金は、特別な注記がない限りすべて税込みです。
- ※年末年始、大型連休、お盆休みなどは一部省略してあります。


