工事の音や人並みで騒がしい地上を逃れ、新宿駅東口地下にある喫茶店。入り口に設置された焙煎機から漂う香りに期待が膨らむ。
世界の名だたる器が勢ぞろい。毎日焙煎するコーヒーとの共演を楽しむ
店内へ入ると真っ先に目に飛び込んでくるのは、カウンター越しの壁面に整然と並べられたカップの数々。「マイセンやウエッジウッドはもちろんですが、古伊万里などもございます。正確な数はわかりませんが、1,000客弱でしょうか」と話すのは、店主の平勝哉(たいら かつや)さん。ここは平さんの父の代から続く創業40数年の老舗喫茶だ。
創業以来コツコツと集めたカップの中でも、佐賀県有田の源右衛門窯の有田焼や古伊万里のコレクションが自慢だそう。そのひとつを手に取ってみると、緻密に描かれた手描き模様は、まさに匠の技。コーヒーを口にするたび、カップの底から違った絵柄が現れるのも楽しい。
毎日煎るコーヒー豆は、平さんが厳選したコロンビア、モカ、ブラジル、ブルーマウンテンの4種類のみ。それらをバランスよく合わせたブレンドはやさしい飲み口で、雑味のないまろやかさが口の中に広がっていく。
生乳から作った生クリームだけを使用した「大人のショートケーキ」は、口当たりの軽い生クリームと、ふんわり食感の生地で、コーヒーとの相性もよく、上質な味のハーモニーを楽しむことができる。
やわらかな間接照明の光と、木の温かみに包まれた店内は静かで居心地がよく、地上の喧噪も忘れさせてくれる。自分だけのとっておきのコーヒー時間を過ごさせてくれる名店だ。

- 文/千葉香苗(アド・グリーン)
- 撮影/岩堀和彦
- ※上記の情報は2024年9月現在のものです。
- ※料金・営業時間・定休日などは変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。
- ※表記されている料金は、特別な注記がない限りすべて税込です。
- ※年末年始、大型連休、お盆休みなどは一部省略してあります。


